2025.11.02-03 頭蓋オステオパシー 応用セミナー

頭蓋領域のオステオパシー「一次呼吸と髄膜・中枢神経」

頭蓋領域のオステオパシーはウィリアムG.サザーランドが1900年代初頭に蝶鱗縫合の形状から着想を得て以来約50年の年月をかけて研究したオステオパシーにおける一つの診断・治療体系であるが、それは彼が発見し一次呼吸メカニズム(PRM)と命名した生体に固有の生理現象を中心概念とする。その一次呼吸メカニズムは以下の5つを基本要素とする。

1. 脳脊髄液の揺らぎ
2. 頭蓋ならびに脊椎内髄膜の可動性
3. 脳と脊髄の固有運動
4. 頭蓋縫合の可動性
5. 両腸骨間における仙骨の不随意運動

JCOおよびJOAの頭蓋オステオパシー・基礎コースでは、これまでに上記要素のうち、4. 頭蓋縫合の可動性ならびに5. 両腸骨間における仙骨の不随意運動に該当する頭蓋各骨ならびに仙骨といった骨の状態を診断・治療する方法を学んできた。

今回の2日間にわたるコースでは、2. 頭蓋ならびに脊椎内髄膜の可動性ならびに3. 脳と脊髄の固有運動に焦点を当てて学習していき、さらに一次呼吸メカニズムの包括的理解を進めていく。

髄膜は硬膜、クモ膜、軟膜の3層から成る。サザーランドは硬膜を相互緊張膜と呼び、頭蓋システムにおいて靱帯のような役割を果たしていると考えた。それは脳を保護するまさに“硬い膜”であるが、外層と内層の間に静脈洞を入れ脳の血液循環に重要な役割を果たす一方、三叉神経や上位頸髄神経などからの神経支配もあり臨床的には頭痛の原因となりうる組織でもある。今回はアーバックルD.O.が指摘したストレス繊維と呼ばれる硬膜内の特定の繊維に対する治療法も学んでいく。クモ膜はその内側でクモ膜下腔を形成するが、そこでは脳脊髄液が循環し、また血管も多く走っている。脳脊髄液が神経組織の健康にとって重要であるのは周知の通りであるが、例えばその循環不全はアルツハイマー病の病態生理に関係していることが指摘されている。また軟膜は脳実質に密着しているため、先の中枢神経の固有運動に直接影響を与えるであろう。

これら全ての膜システムは、物理的ストレスのない状態で一次呼吸メカニズムに同調し機能することで、脳や脊髄ならびに全身の健康に貢献していなければならない。今回はこれらの各髄膜を個別に触診し、それぞれの構造的歪みや緊張を緩和し、一次呼吸メカニズムに伴う生理機能を回復する方法を学んでいく。

脳ならびに脊髄が生命維持に必須の組織であることは言うまでもないが、サザーランドはこの中枢神経も一次呼吸メカニズムとともに固有の運動をしていることを発見した。その固有運動の回復の効果は筋骨格系のみならず、内科や神経科、精神医学の分野にまで及びうり、計り知れない可能性を秘めている。今回は神秘的とも言えるこの人体の最奥にあるこの組織に触れていく。

内容は以下のようなものを予定している。

● 髄膜の発生学
● 髄膜の層触診
● アーバックルのストレス繊維
● 4腔テクニック
● 硬膜嚢
● 尾骨・終糸と中枢神経
● 中枢神経の固有運動
● バードテクニック

日時

2025年11月2日(日)~3日(月・祝) 2日間  9:30~16:30

講師

江熊省吾 Bsc.(Hons.)Ost.Med., D.O.(UK), MRO(J)  

セミナー会場

ジャパン・カレッジ・オブ・オステオパシー
167-0053 東京都杉並区西荻南2-26-2 地図
★会場は土足厳禁です。スリッパ等、室内履きのご持参をお願い致します。
★校舎敷地内は禁煙です。なお住宅街でもあるため近隣での喫煙もご遠慮下さい。

◆講義中、携帯電話は、電源オフまたはマナーモード(音なし)にしていただきますようお願いいたします。

定員

16名

受講要件

頭蓋領域のオステオパシー基礎コースに該当する内容を履修した者