JOA Journal No40 2019.夏
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2019 AAO学会参加報告 脳震盪のバイオメカニクスに関しては、最近の研究で頭部への衝撃力の計測が行われてきました。サッカーのヘディングによる頭部の加速は16~20Gで、25ミリ秒続きます。大学フットボールでの平均的な衝撃は21~32Gで、14~15ミリ秒続きます。頭頂への衝撃は直線加速度および衝撃力の大きさとして最大であり、アメフトでの誤ったタックル・テクニックなどによってこれらは起こるため、注意しなければなりません。バージニア工科大学でのアメフトチームではヘルメットに衝撃を計測する装置をつけ、5年間にわたって25万件以上の頭部への衝撃データを収集しました。その結果、脳震盪と後に診断された試合中の外傷では、ピーク時のGは136Gにも達していました。また、同様の装置を使用してユースフットボール選手(9~12歳の選手)の衝撃のインパクトと方向を分析したところ、正面からの衝撃が最多でした。またアトラス脳モデル(Atlas Brain Model)を利用して、この正面からの衝撃や、回転性の衝撃を伝えやすいと思われる側方からの衝撃の際に、脳にどのような力が伝わっているのか画像で分析したところ、従来考えられていたような単純な直線および回旋の加速がかかるのではなく、もっと複雑なストレインであることが分かってきました。 脳震盪による様々な身体機能についての研究も進んできており、脳震盪後に症状が消失しても暫くの間、姿勢制御や運動制御が正常まで回復しなかったり、下肢の傷害リスクが上がる(ある研究では受傷後90日以内のアスリートで約3倍の受傷リスク)という研究結果も出ています。これまで脳については行われていなかった血液検査も、FDA(食品医薬品局)で最近承認されたとのことでした。 また、脳の外傷後、その老廃物を排出することも重要と考えられますが、その排出路としては近年グリンパティック系(グリア細胞が関わる脳のリンパ系相当の機能)について明らかになってきており、実際ブロリンソンDOの臨床でも、これに対するアプローチを取り入れるようになっている、とのことでした。グリンパティック系に対するオステオパシー手技療法(OMT)は、リンパ系に対するそれと同じ目標を持って行われます。それらは4つあり、1)筋膜の移行部を開く、2)横隔膜の動きの最大化する、3)リンパ還流を増大させる、4)リンパ–静脈系の液を動かす、です。こうした考え方に基づいた循環促進のためのアプローチは、後ほどトビーDOのアプローチとして紹介されます。 今回グリンパティック系に関しての新しい情報としては、ウィルヒョウ・ロバン腔に関するもので、ここに入った脳脊髄液と間質液は、静脈洞の血管周囲とグリンパティック管の2つで構成されるグリンパティックのルートを通り、頚リンパ節から胸管および右リンパ本幹へ流れていくということした。またこうした水力学システムは交通流の面からは双方向性があり、一部は呼吸と心臓の拍動圧によっても駆動されている、ということでした。このことから、単に頭部のみを施術対象とするのではなく、横隔膜の動きの正常化などもその機能の最大化には関わってくると思われます。 脳震盪に関して、オステオパシーの概念を適用させた場合のポイントとして、ブロリンソンDOはいくつかのポイントを挙げています。まずひとつは直接的な力の影響で、この力は直線的か回旋性、もしくは身体のどこか他の部位からの衝撃伝達で、これらは一時的な頭蓋仙骨の体性機能障害(SD)を起こし得ます。また頭部外傷のSDは脳頭蓋、顔面頭蓋、さらには硬膜の連結と付着を介して仙骨まで、どの部位にも起こりえます。これらのSDの診断は、通常のSDの診断と同じARTによって可能です。ARTは、非対称性の観察、位置の触診、可動性の評価と組織の質感の触診です。

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