JOA Journal No40 2019.夏
39/62

サムライオステのまた欧米かよ! ミシガン湖の砂浜で得たインスピレーション 朝7時過ぎ、メキシコ専門店で買っておいたメキシカンソースをトルティーヤをつけて食べる。ハラペーニョが50%というだけあって辛い。が、とても美味い。ふと机の上に置いてあったミシガン湖のパンフレットが目に入ってきた。手にとって見ると、かなり面白そうに書いてあるので寄ってみたくなった。 この日もスケジュールがきっちり入っていたので、ミシガン湖にいられる時間は30分間だけ。タイトすぎる滞在だったが、結果的にとても良い経験を得た。まずミシガン湖というのは、想像以上にデカい。驚いたことに湖面にザザーッと波が立って砂浜に消えていく。静かに立つ波を見てエネルギーを頂いた。海でもないのに波が寄せては消える湖。「何故、波が立つのかな」とぼんやりと考えていた。海と同じく太陽と月の引力によって波が発生していると仮定した。そして答えは、その通りだった。もちろん湖面に吹く風も関係しているらしいが、重力が最大5センチの波を作り出しているらしい。ありがとう、Google先生。 そもそも人類が波の発生理由を証明出来たのは、誰かがある法則を仮定し、何千という実験を繰り返して、その研究結果が世界レベルの学会で報告されたからだ。仮説がその道の学者らにチェックされ、理あり(ロジックである)と認められれば、定説として承認されるのだろう。この波の発生理由を見つけた時は、学会などが存在したかは分からないけれど、人類の積み上げてきたサイエンス研究がなければ、一般に原理が理解されることはなかっただろう。一体だれが海面の波を見て月の引力を想定できるだろうか。自分がいま当たり前のように「波は引力で起こる」と説明できるのは、理科の教科書か科学図鑑なんかで読んだり見たりしたからなのだ。 湖面のさざなみは、オステオパシーテクニックについても考えさせた。僕らが毎日使う技術の1つ1つのロジックは、理解されているのか。「どうだろう」とボヤく自分がいた。例えば、頭蓋テクニック。本当に何が起きているのか理解出ているのか。第一次呼吸って何だろう。そのコンセプトは、確かな実験結果に裏打ちされているだろうか。医師や専門家の人が理解できるように説明可能だろうか。MET技術だって、ミッチェルファミリーの多大なる研究によってロジックは分かるようになってきた。それでもMET技術が人類に有効であると言った実験結果は出ていないだろう。サイエンスとは、何千という研究を重ねることで初めて分かるものもたくさんある。このテーマに関して言うと、オステオパシー技術だけではない、他の手技療法にも同じことが言えないだろうか。僕らが使う技術って、何故、どのくらいの確率でどんな患者さんに有効なのだろうか。この「エビデンス」と呼ばれるものが、今日本を含めた世界で注目されている。オステオパシーの世界でも例外ではないのだ。このエビデンスの有無が今後国内のオステオパシーに大きく左右するのではないかと、著者は感じている。 爽やかに注ぐ早朝の太陽光は、小さく波音をたてるミシガン湖に反射しながら、キラキラとハーモニーを奏でていた。僕はその砂浜に腰を下ろして、20分足らずだったけれど大きなインスピレーションを受け取った。湖の力によって身体と頭は芯からリラックスしてしまって、腰を上げるにはかなり重かった。首と肩の力が抜けて、大きなあくびまでしてしまった。心の底から、ここに座ってこの湖畔で寝そべっていたかった。でも3時間後には、そこから約300キロ離れたミシガン州都ランシング市で巨匠ファミリーと会う約束があった。国代表の訪問者として遅れるわけにはいけない。僕らはゆっくりと立ち上がって、白いジェッタへ戻った。

元のページ  ../index.html#39

このブックを見る